常識の壁を超える

2016/5/12
 筆者:東 耕平
 
私自身が東京農業大学出身ということもあり、ここ数年農業や地方創生というテーマで、コンサルティング活動をしています。そのほとんどが、貨幣という対価だけでは成り立つことのない活動です。

 
  1. 東日本大震災の被災地となった岩手県大槌町、釜石市の農家の方々の支援
  2. 茨城県つくば市のNPO法人が運営するファームの事業計画、戦略策定、組織開発、人事制度設計支援
  3. 京都府京丹後市の限界集落の農業活性を基点としてのマーケティング支援
  4. 熊本県水俣市の活性化(企画段階で今回の地震で一旦中止)
  5. 山梨県甲府市の新規若手就農者支援団体と農業を通して障害の在る方々の就労の機会を創ろうとしている病院の支援
 

とプロジェクト数が増えているだけでなく、現場に深く入り込みながらのご支援が必要となってきています。 例えば、一緒に農作業をする、定期的に顔を出し地域の方々とのつながりを深める、などです。 ここに、貨幣としての対価だけを求めても、プロジェクトを動かすことは困難になってきています。 経営資源としての金を事業運営に回すことが重要であり、私たちの既存タリフ(料金)では、ビジネスパートナーとしては選ばれないからです。

 
 

なぜこのような仕事のスタイルが増えてきているのかというと、IT革命による経済の在り方の変化が一つ挙げられます。 現在の経済活動は、産業革命後のマネタリー経済(貨幣経済)だけでなく、IT革命後に復活したボランタリー経済(贈与、善意、相互扶助の経済)が融合してきています。 元々日本には、地域のコミュニティーや家族での相互扶助の意識が高く、今で言うボランタリーな経済が、狭い範囲で成立していました。

 

地域全体で育児をする、お隣の家が大変な時には援助する、お裾分けをすることが日常的に行われていました。 IT革命により、このような活動が世界中でつながるようになりました。 食べログやAmazonのユーザー評価や、クックパッドのレシピ公開、クラウドソーシングや、クラウドファウンディングなどは、ボランタリー的な動きと言えます。 対価としてお金をもらうことは必要です。ただ、それだけではなく、対価としての経験、自己成長、つながりも重要となってきています。

 

私自身も、農家さんからご支援の対価として、野菜や米をもらう、一つの経験からできることが増え、次の活動につながるなどボランタリーな経済の中で生かされています。 一つの企業や一人ではできないことが、それぞれの「できること」をつなぐことで、社会の問題を解決していく時代です。 動いた者が何かを動かす。 できる人ができるタイミングでできることをやると、何かを興せる。何かが起こる。 一人ひとりが自分のできることを認識し、世の中のために活かしていく。

 

今、いただいた取り組みの中から、深め拡げ創り出していきたいと思います。

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