実践的な商品企画研修で、マーケットインの発想力を身につける
——パナソニック株式会社 アプライアンス社 様
2020/3/30
パナソニック株式会社の家電部門を担当する社内カンパニー、アプライアンス社では、6年前からHRインスティテュート(以下、HRI)のオリジナルメソッド「ワークアウト®」手法に基づいた独自の研修を導入。「APW(アプライアンス・ワークアウト)研修」と称するその研修では、参加者たちが商品企画開発に必要な思考法やマーケティング手法、事業計画を実践的に学んでいます。導入の背景にある人材育成に関する課題とは、どのようなものだったのでしょうか。研修の塾長を務めるランドリー・クリーナー事業部 事業部長の安平宣夫様にお話を伺いました。
(取材協力)
パナソニック株式会社 アプライアンス社
ランドリー・クリーナー事業部 事業部長 安平宣夫 様
一朝一夕では身につかない緻密な技術力
—貴社の事業内容をお教えください。
当社はパナソニックの社内カンパニーとして、掃除機や洗濯機、冷蔵庫やエアコン、シェーバーやドライヤー、テレビやオーディオなど、暮らしにまつわる家電製品の開発、製造、および販売に取り組んでいます。
—研修に際して、貴社が抱えていた人材育成に関する課題はどのようなものでしたか。
若手技術社員の技術習得には長い歳月を要します。あるユニット設計に数年間従事し、その作業に熟練すれば、他の設計にまた数年と、着実に技術力を身につけていきます。そうやって、発表される新製品は、より良い性能をよりコンパクトに、と常に進化していくわけです。けれどもそれは反面、直接商品企画に取り組む機会がないまま、目の前の技術課題解決に特化することになり、視野が狭くなりかねません。
若手のうちから「顧客のお困りごとの解決」をもとに発想し、プロトタイピング(試作)、事業計画やプレゼンに至るまで、実際の商品企画開発に匹敵するような経験を積む。そうして、高性能をひたすら追求するようなプロダクトアウト的な手法だけでなく、お客様の内なるニーズを分析し、それを解決するようなマーケットイン(顧客視点)の発想を身につけてもらいたいと考え、HRIさんとともに研修に取り組んでいます。
商品企画の擬似体験で、顧客視点の発想を
—「APW研修」では、具体的にどのようなことを行っているのですか。
当社の事業部のうち、滋賀・南草津を拠点とするランドリー・クリーナー事業部、キッチンアプライアンス事業部、冷蔵庫事業部、ビューティ・リビング事業部、エアコン事業部、テレビ事業部、ホームエンターテイメント事業部の計7事業部(毎年、参画事業部は変動する)から若手・中堅社員をメインに選抜し、4~5チームを編成。それぞれにチューターとして、商品企画部長や課長クラスの社員も加わります。そして8〜10カ月にわたって、商品の企画開発を擬似的に実践していくのです。
手順としてはまず、大まかなフレームとして、事業課題に基づいたテーマを私たち事業部長が「事業部長与件」として設定します。そこから各チームでターゲット設定し、マーケット調査とデータ分析、製品企画、プロトタイプの作成に取り組み、最終回の製品発表まで行います。私はこのAPW研修の塾長として、チームを横断的にマネジメントしています。HRIのコンサルタントには毎月研修に来てもらい、ロジカルシンキングやマーケティング、戦略体系などレクチャーをしてもらいながら、都度アドバイスをいただいています。
—研修参加者の反応はいかがですか。
若手社員ほどアイデアとしては面白いものが出ますが、事業課題への深い理解と、それを製品に結びつける発想力としては、中堅社員も存在感を見せてくれます。ただ、普段の業務ではプロダクトアウト的な考え方が身に付いている分、なかなかマーケットインの考え方へと転換することが難しいようです。けれどもその壁を超えて、大きな気づきを得られる瞬間があるんです。それはやはり、研修を通して思考力が鍛えられるからでしょう。
「擬似的な商品企画」と言っても、実際にはかなり本格的に取り組みます。例えば、インドネシア向けの洗濯機を企画したチームは、実際に現地へ向かい、市場調査を行いました。インドネシアはイスラム圏ですから、その文化や風習、生活を理解してこそ、本当にお客様のニーズに応えられる商品を開発することができる。それだけ、本気で研修に取り組むことが重要なのです。
お客様の潜在的なニーズを理解し、市場分析や収益性など事業戦略面から立体的に検討し、実際に製品化を検討できるほど精巧なプロトタイプを作りあげる……商品開発にまつわる一連の流れをチームワークで経験するのです。そして研修最後の全体発表会では、社長はじめ、各事業部長から講評をもらいます。そこまで真剣にやり抜いて、アイデアを形にするという経験、自分たちで商品を作りあげる喜びを得てはじめて、本質的なものの考え方が身につけられるのだと思います。
参加者に起こった意識変革が、新たな推進力に
—研修を導入してから現れた効果はありますか。
導入して6年ほどになりますが、歴代の研修参加者は社内でも重要なポストで活躍しているようです。商品企画の責任者になったり、海外事業を担当したり、昇進している人もいます。もともと優秀だった面はあるかもしれませんが、研修に参加したことでマインドにドライブがかかり、大いに刺激になっているようです。
そしてマーケットインの発想を身につけた研修参加者が各事業部に戻り、少しずつ変革への道筋を立てることで、事業部としても新たなアプローチで商品企画ができるようになりつつあります。
また、これは裏の目的でもありますが、チューターとして参加した課長や部長クラスの意識改革にも一役買っています。マイクロマネジメント気味で、つい手を出していたり、チューターばかりが発言していたりする時には、HRIのコンサルタントからも一言添えてもらっています。過去のやり方にとらわれず、お客様の本当に欲しいものを生み出すことが、商品企画のあるべき姿であるはずなのです。お客様を理解し、考えることがきちんとクセとして身につけられるかどうか。市場課題から目をそらさず、商品企画に活かせるかどうか。その点を研修を通してチームに問いかけていますし、チューターであるマネジメント層にも訴えかけているのです。
—研修に参加した社員がそれぞれの持ち場に戻り、研修で身につけたマーケットインの考え方を発揮することで、各事業部の新たな推進力になっているのですね。
そうです。“潜在欲求”を見つけ出して商品企画に活かすことは、なかなか難しいと思えるのですが、メンバーからは「“諦めニーズ”もその中の一つではないか」という意見もあって、面白い切り口だな、と思いました。“諦めニーズ”というのは、「こうなったらいいけど、きっとメーカーは作ってくれない」と思われているようなもの。けれどもそこを掘り起こし、アイデアを具現化すれば、まだまだ私たちが開発できるものはたくさんあると思います。花粉も吸い込める掃除機や、障害物を避けながら掃除するロボット掃除機「RULO」などは、その最たるもの。そのためにはやはり、お客様のことをよく考え、理解しようとするクセをつけることが重要なのです。引き続きHRIのみなさんにはお力添えをいただければと思います。
(右から)
株式会社HR インスティテュート フェロー/エグゼクティブ・コンサルタント
野口𠮷昭
パナソニック株式会社 執行役員 アプライアンス社副社長
パナソニック アプライアンス アジアパシフィック社 社長(初代塾長)
田岸弘幸 様
パナソニック株式会社 アプライアンス社
ランドリー・クリーナー事業部 事業部長
安平宣夫 様
株式会社HR インスティテュート コンサルタント
江口瑛子
パナソニック株式会社 アプライアンス社
滋賀県草津市野路東2丁目3-1-1
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