ビジョンハウス研修レポート もっと伝わる!書き方講座
2023/10/6
今回のテーマとゲスト
「 もっと伝わる!書き方講座 」
講師: 池口 祥司 様( 編集者 ・ ライター )
弊社メンバーの学びの場である「社内勉強会(ビジョンハウス研修)」の内容を紹介します。 毎回素晴らしいゲスト講師をお招きし、弊社メンバーだけでなく、このページをご覧になった皆様にとっても学びや気づきを得る機会となることを願い、研修のポイントを公開しております。
今回は、弊社書籍「30ポイントで身につく!」シリーズの編集をはじめ多大なるご支援をいただいている、編集者・ライター 池口 祥司様(以降、池口さん)をお招きし、相手にもっと伝わる「文章の書き方」のポイントを伺いました。
1.講義テーマの背景
私たちは日々なにげなく言葉を使っていますが、いざ相手に伝えようとすると、その内容が相手にとってわかりやすく伝わっているのか不安になり、説明を重ねたことでかえって相手を混乱させ伝わらなかった、という経験はありませんか? また、話すことは得意だけど文章にして書くとなると、筆が進まなくなってしまった……そんな経験をお持ちの方は少なくないのではないでしょうか。
また、ブログやSNSなどのソーシャルメディアはますます普及し、公式アカウントを運用している企業も多く、その投稿担当者は、魅力的で読みやすいコンテンツの作成が求められています。簡単に表現ができる反面、少しの表現の間違いが大きな問題につながる可能性もあります。私たちは、問題を回避し相手に少しでも魅力的に伝わる書き方のスキルをつけることが必要だと感じています。
今回の講座で、正しい情報を少しでも魅力的に伝えられる文章を作成できるように学んでいこうと思います。
2.講義内容
(ここからは、池口さんの講義を要約した内容となります。)
池口祥司氏プロフィール
株式会社PHP研究所にて約10年間勤務した後、書店の役員を経て、現在はフリーランスの編集者・ライターとして活動しています。HRIの書籍では「30ポイントで身につく!」シリーズをはじめ「コンサルタントの〇〇力」シリーズ、「企業遺伝子の継承」の編集などを手掛けました。
第1部 「伝わる!」を考える(編集者の視点)
極端なことを言えば、文章の巧拙はあまり気にせず、伝わるならなんでもいいのです。現代では活字や写真、動画(ショート動画含む)と表現手法は多岐にわたりますが、その中でも大事なことは、「企画をする」ことです。
そもそも、「話す」のはばっちりだけど「書く」とうまくいかないのはなぜでしょう。 取材記事を作成する際に、取材音声の文字起こしをしただけでは意味が繋がらないことがよくあります。なぜかというと、その時その場の雰囲気で伝わっていることが多く、話し言葉そのままの原稿では2万~3万字あったとしても「コンテンツ」にならないからです。「話し言葉と書き言葉の違いは何か」や「文章ではどう伝えたらいいのか」という疑問にこれからお答えしていきます。重要なことは内容が伝わらなければ意味がない、ということです。
ステップ1 「伝えたいこと」を言語化しよう!
伝えたいこと、たとえば「書籍のタイトル」は目に留まらなければ見逃されてしまいます。ビジネス系メディアのWEBサイトのタイトル見出しでは、センセーショナルなワードが使われることがよくありますが、いいか悪いかは別として情報が溢れている現在においては、読者の目を引くために尖った言葉が必要になります。実用書でも極端なタイトルのものが売れる傾向にあります。
ステップ2 「全体像」を明確にしよう!
企画が完成したら、企画の趣旨となるメッセージを文章化し、伝えたいことや順番を考えてみましょう。書籍の「はじめに」に当たる文章を書くことで内容が整理されることがあります。たとえば、ノウハウ等を伝える際は、次のようなポイントに触れると伝わりやすくなります。
1.私はだれか (このテーマを語るのに適任である理由)
2.課題は何か
3.独自の解決方法
だんだんと細部や深い部分を書き進めていくと、伝えたいことがズレることもあるため、 再三にわたって「ゴールは何か」を振り返るのがよいでしょう。
ステップ3 伝わる「順番」に並び替えよう!
誰に何を伝えるかを整理したあとに、どういう順番で伝えるかを考えます。順番が違うだけで印象はがらっと変わります。伝えたい人によって、効果的な順番というものがあるのです。
書籍を編集する際も、読者の興味がありそうなことは前半部分に、著者が話したいことではあるが刺さりにくい部分は、5章6章あたりに持ってくることがあります。前半で地ならしをして信頼関係を築き、後半のために興味関心を持ってもらうのです。
ワーク 「ワークアウト」を400字で説明してみよう!
ここまでのステップを実践するべく、弊社商品の「ワークアウト」について400字で説明する演習を行ないました。各自のアウトプットに対して以下のような指摘をいただきました。
・抽象度を上げ過ぎない。具体的な活動や事例、効果の数字などが記述されると魅力的になる
・1文は短く、80字くらいが望ましい
・主語と述語が対応しているか確認する
第2部 「伝わる!」文章を考える(ライターの視点)
文章は、会社のトンマナ(トーン&マナー)に準じて作成します。その企業らしさを忘れずにステークホルダーに寄り添うことが重要です。あるステークホルダーにとってはよい内容でも、その他のステークホルダーにとってはベストではないことがありますので、「メインの読者に届けばいい」だけでなく、多面的にチェックをすることも必要になってきます。方向性に迷ったら、企画に立ち返りましょう。
ステップ1 「取捨選択」をしよう!
YouTubeもWEBページも長くしようと思えば長くすることができます。伝えたいことを全部掲載することもできますが、それがわかりやすいとも限りません。また、全員の意見を反映すると「だから何?」になりやすく、面白味のない文章にもなりかねません。過不足なく書くことが重要で、要素は多すぎてもよくないし、少ないと内容が薄くなってしまいます。
ステップ2 「抽象」と「具体」を行き来しよう!
読者が期待するのは、こうやったらうまくいったなどの具体的な事例です。苦労されたことや成功する前はどうだったかを掘り下げると、読者に刺さりやすくなります。
具体的な話だけだと「いい話聞いたな、でなに?」になりやすく、「つまり~」の再現性が高い表現になると読者の共感を得やすくなります。大事なのは、具体と抽象(つまりどういうこと)を何度も行き来しながら書き進めていくことです。
ステップ3 文章に磨きをかけよう!
企画書に立ち返ることや、取材のあとに要素を箇条書きし、設計図にしてみることもおすすめです。前後の論理的矛盾がないか、最初に言っていることと最後に言っていることに違いはないかなど、ストーリーをつくることでわかりやすくなります。
文章に磨きをかけるときのポイント
・まずは細部にこだわるよりも、全体を見る
・読者を混乱させていないか(首尾一貫しているか)
・話の展開に「矛盾」はないか
・一文の長さは80字くらいが目安
・主語と述語はズレていないか
ワーク 魅力的な「プロフィール」を作成してみよう!
自分自身を宣伝するようなプロフィールを作成してみました。会社に所属しながらも個性を出すような、会社7個人3の割合で書くことにチャレンジし、メンバーの個性的なプロフィールができあがりました。(※後日、個別にフィードバックしていただきました)
売れる本のプロフィール欄には、長いだけでなく、「こんなことも書いてしまうの?」という文章が入っていることがあります。まずは書いてみると新たな面が発見されるので、いろんな意味でメリットがあります。
第3部 「伝わる!」よりも大切なこと(校正者・校閲者の視点)
最後は守りの話で、校正者や校閲者の視点です。ミスや間違い、矛盾を探すのが校閲者の仕事です。校閲者になったつもりで、自社に不利益な発信(失言)になる可能性があることは言う必要があるのか、立ち止まって考えることが重要です。
ステップ1 「ケアレスミス」ゼロを目指そう!
ミスをなくすためにも、以下の4項目をチェックしてみましょう。
1.固有名詞(社名、人名、地名など) 漢字の間違い、生きている方を故人としてしまう、架空の会社のはずが存在していた、など。社名・人名は名刺等を見て確認するとよいでしょう。
2.事実確認(西暦や数値、経験など) 西暦や数値など事実確認はしっかりチェックします。
3.引用 デジタルデータのコピー&ペーストが容易になっていることもあり、「引用」に対してフランクに考えるケースも増えてきている印象がありますが、そうした時代だからこそ著作権等にしっかりと配慮する必要があります。また、長年その話題を使っていて血肉となっているパターンで、「引用」と言いながら「要約」して書いてしまうこともあります。引用なら一字一句一致していなくてはいけません。
4.文字統一、誤字脱字 「てにをは」などの確認に加えて、「ですます調」と「である調」が混在していないかなどもチェックしてみましょう。
ステップ2 「ファクト」にこだわろう!
ファクトチェックができていなかったため、書籍の回収やテレビ出演等の自粛に至るケースはいくつも存在しています。そうならないためにも念入りにチェックしていただければと思います。
ステップ3 「ダイバーシティ」を意識しよう!
「この表現、この言葉を使うことで、読者はどんな気持ちになるだろうか」を考えるなど、相手の視点に立って適切な言葉を選択することを意識してみてはいかがでしょうか。
3.まとめ
「私たち一人ひとりの中に編集者、ライター、校正者の3つ視点を持つ」ということが、今回、池口さんのお話を伺って私が一番心に残っている内容です。文章が伝わるためには、タイトルや順番の工夫などの事前の企画、執筆した文章の推敲、ファクトチェックやダイバーシティへの配慮など、どれも重要で怠ることができないことだと感じます。また、ワークの際に池口さんがおっしゃっていた「とにかく書いてみる」、書くことがきっかけで自分自身の可能性が広がる、という言葉が印象的で私もこれからどんどんアウトプットしてみたいと思います。
ユーモアも交えながらのとても充実した講義内容と、セミナー内と事後でメンバーのワークの一つひとつに丁寧にフィードバックをしていただきました池口さんに、心より感謝申し上げます。
記:太田 希
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