社員ひとりひとりが「ここでよかった」と思ってくれるような会社に
株式会社PILE様

2023/4/10

 

仙台市に拠点を置くクリエイティブカンパニー、株式会社PILE。2006年に専門学校時代の同級生5人でデザイン会社として始動したPILEは、会社としてのMVVを策定。HRインスティテュート(以下、HRI)は、その策定に携わりました。MVV策定の背景や今後にどう活かすのか、株式会社PILE取締役のおふたりに伺いました。

会社が大きくなるにつれ、増えていった違和感

―貴社の事業内容を教えてください。

 

佐藤高則様(以下、佐藤):デザイン会社として2006年に個人事業で立ち上げ、2009年に登記しました。弊社は、デザインワークをメインに、ホームページや広告媒体を手掛けています。同年に東京事務所を開設し、2010年からはアパレル事業を展開。当時の事務所の隣に国内外のブランドを扱うセレクトショップ「Delicious」をオープンしました。また、EC部門も立ち上げ、通販サイトの運用、管理、発送まで行っています。

 

―学生時代の友人関係にあった5人で立ち上げたそうですね。

 

佐野弘之様(以下、佐野):学校を卒業するときに「5年後に一緒にやろう」と約束したんです。それぞれ会社設立のための資金を積み立てて、「そろそろやる?」という感じで始めました。当初は、それぞれが辞めたところでお世話になっていたクライアントさんから、ご祝儀のような感じでお仕事をいただいていましたね。そんな中で「ホームページ新しくしたい」という相談を受けたのですが「やったことないな…」って(笑)。

 

 

佐藤:とはいえ、仕事として受けたので、最初は独学で必死に勉強しました(笑)。でも、案件が増えきて、将来的に需要が増えてくることは感じ取っていたので、二束のわらじというよりも、専門でできる人間を仲間にしようということになりました。当時、うちによく遊びに来ていた先輩が「ウェブをやりたい」って話していたので、当時の仕事を退職して訓練校に通ってもらって、それから弊社に入社してもらいました。今でもコーダーとして活躍してくれています。

 

―現在は、ナショナルクライアントのクリエイティブも手掛け、デザイン会社として大きな信頼を集めていますね。

 

佐野:かつて弊社では「COMMON MAGAZINE」というフリーマガジンを発行していたのですが、そのときに「広告を取りに行きたいね。いずれ広告収入だけで食べていきたいよね」って。若かったし、何もしらなかったから「好きなマガジンを作って、食べていける」って思っていたんです。それで、「じゃあ、どこ行く?大手通信会社に行ってみようか?」って(笑)。

 

佐藤:しかも、最初に行った先が通信会社のケータイショップ(笑)。「うちに来られても困るんだけど…」と、東北支社の人を紹介してくださったんです。でも、そこでも「うちに来られても困る。代理店に行ってくれ」と(笑)。当時の僕らは「代理店ってなんだ?」って感じだったのですが、そこでつながった代理店さんといまもお付き合いさせて頂いています。

 

佐野:担当の方が僕らのことを面白がってくれて、そこから仕事をくれるようになった。こんな身なりの若造を「面白いな」とかわいがってくれて、そこからいろいろな代理店さんをご紹介いただいて。今の仕事につながっています。

 

 

―ところで、貴社ではMVVを策定されましたが、その経緯を教えてください。

 

佐野:ここ数年、高則(佐藤様)とほかの役員と「同じ方向を向けていないよね」という話はよくしていたんです。僕らはプレーヤーで、役員として会社の核となる部分を考えられていなかった。役員5人いて、会社の方針は1人の意見で決められることじゃないし。会社が大きくなってきて、デザイン、企画、アパレル、ECと部門も分かれてきて、なんとなく違和感を持つようになってきた。昼ごはんを食べながら、みんなでそういう話をするんですけれど、現場へ戻ると現実に戻ってしまう。そんな中、HRIの後藤くんに僕の息子が所属するサッカーチームのMVVを作ってもらったら「なんだこれ?いいぞ!」となって。どんなに役員だけで話をしていても、日々の仕事に忙殺されてなかなか前に進めないので、後藤くんにお願いすることにしました。

 

HRI後藤(以下、後藤)):佐野さんとは、私が前職のときからの知り合いでした。あるプロジェクトのデザインやディレクションをPILEさんにお願いして、本当にいいものをつくってくださった。ある日、佐野さんから「中学生のサッカークラブをかっこよくしたいんだよね」と相談を受けまして。それで、MVVを策定したことから、今回へとつながりました。

 

佐藤:スタッフの人数が20人を超えたあたりから、「なんとかしなくちゃ」という思いはあったんです。役員である僕ら5人は、自分たちの会社でもあるからどんな仕事でも楽しめるし、たとえ苦しいことがあってもポジティブに取り組むことができる。でも、この世界が好きでPILEに入社してくれた子たちは、「どういうマインドであれば居続けてくれるんだろう?」と常々考えていて。社員を育てるなら長く勤めてほしいし、PILEで働いているからこその喜びとかも感じてほしかった。役員の1人がもともといた会社でスローガンを掲げているのを見て、「会社として、こういうの欲しいよね」とも話していたので、「後藤くんにMVVをお願いしよう」という話がでたときは「ぜひ!」という感じでした。

言葉選びが難しかった、MVVの策定

―MVVの策定はどのように進めていったのですか?

 

後藤:MVVの策定は、「創ること」が目的ではなく、創ったうえで、それを社員の皆さんが、自分たちの指針として、自分事化していくことが何より重要です。なので、策定のプロセスも重視しました。まずは、全社員のみなさん約20名にヒアリングしました。ヒアリングすることで社員のみなさんもそのプロセスに対してポジティブにとらえていただき、興味関心をもってくださったと思います。ヒアリングで現場の声をしっかりと汲み取ったら、あとは、経営陣でひたすらディスカッションです。

 

―MVVを進めていく中で、どのようなことを感じましたか?

 

佐藤:インタビューやディスカッションを通して、後藤くんからたくさんの問いを投げかけられる中で、自分の心の中の思いに立ち返ってみたり、考えたりすることが多かったです。自分のなかで「ああしたい、こうしたい。こういう会社でありたい」と思っていても、それが自分のエゴだと気づいたり、「会社のために」としながら独りよがりになっていたり。新たに考え直していくこと、とくに言葉選びがかなり難しいと感じました。

 

佐野:僕も言葉選びが難しかったですね。思っていることは伝えられましたが、高則は高則でデザイン部門のこと、僕は僕でアパレルのことを後藤くんに伝えていって、それがうまくMVVとして交わるようにしなくちゃいけないわけです。ニュアンスがあっているかどうか、言葉のすり合わせをたくさんしました。

 

後藤:5人の役員の方々の頭の中で、「言葉にしなくてもわかっていること」を言語化しました。5人の中ではわかっていても、社員のみなさんにはきちんと言葉にしないとわかりませんからね。

 

―社員のみなさんの反応はいかがでしたか?

 

佐藤:会社にとって新しいことなので、MVVの発表にあたってはいつもとの違いをつくるために会議室を借りてみたんです。そのかいもあってか、スタッフ全員、素直に前向きに理解しようとしてくれていました。ただ、まだ正直ピンと来ていないと思うので、今後もディスカッションを重ねながら自分事化していかないといけないと感じています。時間はかかると思いますが、これからもっともっと意識してもらって、文言を見なくても自分事化されるようになってほしいですね。

 

佐野:PILEは、11月1日が創業日なので、その日に新しいロゴの発表とMVVについて考えるワークショップをやったんです。会社としてそういうのがあるというのを知ってもらえたり、迷ったときに立ち返ったりするものができたのはよかったです。僕自身を含め、みんなの目印ができました。

 

―MVVについてのワークショップはいかがでしたか?

 

佐野:デザインだったら高則、アパレルは僕…と、担当役員がそれぞれのスタッフとグループワークをしたんです。最初のアイスブレイクのゲームがおもしろくて、すごく盛り上がって。そのウォームアップがあったからこそ、みんなが思うように発言できましたね。

 

佐藤:ワークショップでは、前向きな言葉をたくさん聞くことができました。みんなちゃんと、どう会社をよくしていくかを考えてくれていたのが見えました。

 

後藤:私も横から見ていて、みなさんPILEさんのこと好きなんだな、愛着を持っている人が多いのだなと感じました。

 

 

定期的に考える時間を設けて、MVVの定着へ

―今後、MVVを浸透させるのに、どのようなことをしていきたいですか?

 

佐野:まずはホームページをつくりたいですね。MVVの策定にあたってロゴデザインを変えたので、いろいろなツールに入れていきたいです。あとは、定期的にMVVについて考える時間を設けて、社員と共有する時間を設けたいです。考えていないわけではないけれど、みんな日々の業務に追われているのが現状なので。

 

佐藤:サイトや名刺に入れていくことはやっていきたいですね。目に触れるところにあった方が、意識も定着すると思うので。あとは、ディスカッションも重ねて、いろいろな人の考えを聞いていくのも大事だと思います。実際、スタッフ数人に「ワークショップがよかった」といってもらえて。時節柄なかなか飲みに行くこともできなかったので、いい機会でした。これをきっかけに、コミュニケーションの場を設けていきたいですね。

 

―今後、会社としてどのようなことを目標として実施していきたいですか?

 

佐野:MVVはできましたが、より強固な組織になるためにも、まずは全員で一致している「移転したいよね」をかなえたいですね。人が多くなって手狭だし、今3カ所に分散しているオフィスとお店を1カ所にしたいな、と。コミュニケーションもスムーズになりますし。

 

佐藤:近い距離でコミュニケーションが取れると、会社がひとつになりやすいですからね。今は「店は店、企画は企画、デザインはデザイン」となっているので、まずは移転(笑)!そのうえで、MVVを策定したことをきっかけに、「ひとりひとりが楽しい」と思う会社にしたいです。でも、ただ楽しいわけではなくて、そこには努力も必要です。でも、そういうことすらも楽しんでほしいし、たとえここを辞めてしまったとしても、PILEでよかったと思ってほしい。スタッフが自分たちの解釈で仕事を楽しんでくれて、それが外に伝播していって、お客さまも楽しくなってくれたらいいなと思います。

 

 

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