2019年6月8日(土)第24回ビジョンハウス倶楽部セミナー
「介護を自分の人生の一部として肯定するために」
2019/8/8
早めの備えで介護離職を回避する。
今、企業と個人が備えておくべきことは何か。
介護のプロ、株式会社リクシス酒井氏と考えるセミナーを開催
1.概要
株式会社HRインスティテュート(本社:東京都渋谷区、代表:稲増美佳子、以下HRI)は、「第24回 ビジョンハウス倶楽部」を2019年6月8日(土)に赤坂インターシティコンファレンスにて開催しました。
「ビジョンハウス倶楽部」は、教育、医療、環境といった社会的テーマについて国内外の現状を学び「社会のために何ができるのか」を考え、意見交換する場として、HRIが2007年より開催している参加費無料のソーシャルイベントです。
今回は、仕事と介護の両立を目指す介護系IT企業である株式会社リクシス取締役副社長の酒井穣(さかい・じょう)氏を招き、「介護を自分の人生の一部として肯定するために」をテーマに、約50名の参加者に向け講演を行いました。
2.介護、そして介護離職とは
今回のテーマは、高齢化が進行する日本において、ますます重要性の増す課題である「介護」です。誰もがそう遠くない未来に、介護する側としても、介護される側としても体験する可能性が高いのが「介護」でしょう。しかしその一方で、いざ「その時」に直面するまで真剣に考えることを先送りしてしまいがちなこのテーマについて、27年間にわたり実母の介護に従事されており、現在はビジネスパーソンの仕事と介護の両立をはじめとして、様々な高齢者問題に取り組む酒井穣氏が、ご自身の実体験から「介護のリアル」を余すところなく語ってくださいました。
介護に関しては、「介護離職」や「虐待」など、とかく重苦しい話題とともに報道される機会が増えています。経済的側面から見ても、介護の開始から終了までに1人あたり平均800万円かかるというデータもあり、人生における重大なライフイベントであることは間違いありません。そして団塊の世代が75歳、つまり後期高齢者となる2025年を境に、介護を必要とする人が爆発的に増加すると見られています。この「2025年問題」は、日本の歴史においても、非常に大きな社会問題になっていきます。
こうした現状を前提としつつ、酒井氏は問題を解く鍵は「介護の重度化を避ける」ことと言います。そして「様子見をやめて、具体的な対応を早くすればするほど介護は重度化しない」と続けます。仕事も介護も準備・段取りが重要であり、その第一歩として、信頼できる介護のプロとのつながりを事前に(できれば今すぐに)作ることを強く勧めていらっしゃいました。また、「介護離職」は多くの場合において悲惨な結末に至る可能性が高いため、絶対に避けるべきと強調されました。
3.介護に備える5つのポイント
さらに、具体的に準備しておきたい5つのポイントを示します。これらは、一歩を踏み出さなかったことで後悔するポイントであるため、ぜひ進めておくべき項目だと言います。
1.要介護認定のプロセスを知っておく
とにかく申請することが重要で、その窓口として「地域包括支援センター」を利用すること。親の入院中に済ませられるのが理想的。退院後に慌ててアレンジしようとすれば、認定がおりて、プロの支援を得られるまでの1ヶ月前後の時間は、全て自分だけで介護することになる。
2.職場の介護支援体制について理解する
法定では介護休業制度で93日まで休むことが可能。企業によっては、法定を超える支援体制(介護相談窓口)を整えていることも増えてきているため、その確認も忘れないように。また実際に必要な支援策があれば、それを人事部に伝えてあげると人事部としても助かる。
3.ケアマネージャー(ケアマネ)の人脈
介護の質はケアマネ次第なので、優秀なケアマネを探すことが重要。優秀なケアマネに依頼できれば介護の負担が激減し、親のQOLも高まり、自分の罪悪感も低減する。家族会などを利用して、優秀なケアマネの情報を集めるようにしたい。
4.親の主治医との関係性
主治医は要介護認定の申請時に意見書を書く存在であり、親が認知症になる前に主治医と連携しておけると、認知症になった時の対応が変わる。主治医経由でないと、特に認知症になった親は診察を拒絶することも多いので、介護の初動が遅れる。親の自宅近辺で通いやすいクリニックなどと関係性を構築しておくと良い。
5.親の趣味や価値観について理解しておく
親が認知症になることを覚悟しておいたうえで、親が大事にしているものをあらかじめ少しでも知っておけると役に立つ。認知症でも、親の趣味や価値観に沿った介護がなされると、介護の負担が減ることが多い。
4.セミナー参加者の感想
「まだまだ先のことだと思っていたし、自分は大丈夫だろうと思っていましたが、今から準備しなければならないと思えた。社内にも共有したい」。
「この場にいなければ知ることのなかった知識が多く、目がさめた気がしました。」
「介護は自分事ではなかったが、今日の話で一気にリアリティをもった。自分の家族のことはもちろん、人事として会社で何をするべきかを考えるきっかけになった。」
「”介護の実態をかいまみれた気がします。大変ためになりました。”」
「介護について不安に思っていた事がクリアーになった。」
また、本日のセミナーに対する満足度は、満足している以上の方が、100%で、その中でも「とても満足している」方が、90.9%となった。
5.終わりに
酒井氏は介護という複雑かつ重いテーマについて、時にユーモアも交えながら軽妙なトーンで語ってくださいました。そのお話は、「正常性バイアス(自分だけは大丈夫という誤解)」や直面するまで重苦しい問題は考えないで済ませてしまう私たちの行動原理を踏まえた上で、介護を自分の人生や仕事にとってポジティブなものと捉える視点を与えて頂きました。
「介護とは、すべての個人に与えられている大きな成長のチャンス」という酒井氏の言葉は、できる限り早く「我がこと」として介護について考え、行動を起こす大きなきっかけとなりました。
介護に関して、身体的な世話は手段の一つでしかなく、介護される方の「生きていて良かったと感じる瞬間の創造」が目的、とおっしゃる酒井氏のお話は、今後介護に携わる方の意識を変えていくことでしょう。
ビジョンハウス倶楽部は、「シェアリング」というコンセプトのもと、HRIが社会貢献活動の一環として定期的に開催しているイベントです。“これからの未来”を希望あふれる日々にしていく取り組みの一環として、今後も多彩なゲストをお招きし、参加費完全無料で様々な学びを参加者同士がシェアできる場をご用意してまいります。
イベント概要
名称 | 第24回 ビジョンハウス倶楽部「介護を自分の人生の一部として肯定するために」 |
ゲスト | 酒井穣氏(株式会社リクシス取締役副社長) |
開催日時 | 2019年6月8日(土) 13::00-16:00 |
開催場所 |
赤坂インターシティコンファレンス |
参加費 | 無料 |
参加者 | クライアント、パートナーの皆様、HRIメンバーの家族やOB等約49名 |
イベント内容 | 「シェアリング」というコンセプトのもと、お世話になっているクライアントやパートナーの方々と共にゲストスピーカーによる講演を聞き、「社会のために何が出来るのか」を皆で考え、意見交換を行う場 |
会社概要
社名 | 株式会社HRインスティテュート |
代表者 | 代表取締役社長 稲増美佳子 |
本社所在地 | 東京都渋谷区神宮前1-13-23 |
URL | https://www.hri-japan.co.jp |
設立 | 1993年11月 |
資本金 | 1,000万円 |
従業員数 | 35名(契約社員含む) |
事業内容 | ビジネスコンサルティング&研修プログラムの企画・開発・実施 |
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