【 ビジョンハウス研修レポート 】
働き方先進国 「 オランダ 」 から学ぶ、幸せになる働き方 2022年9月実施
2022/11/8
今回のテーマとゲスト
働き方先進国 「 オランダ 」 から学ぶ、 幸せになる働き方
秋山 開 さま ( 公益財団法人 1 more baby 応援団 専務理事)
弊社メンバーの学びの場である「 社内勉強会( ビジョンハウス研修 )」の内容を紹介いたします。 毎回素晴らしいゲスト講師をお招きし、 弊社メンバーだけでなくこのページをご覧になった皆様にとっても、 学びや気づきを得る機会となることを願い、 研修のポイントを公開させていただいております。
今回は、公益財団法人1 more baby 応援団 専務理事 秋山 開 さまにご登壇いただきました。1 more baby 応援団は、 子どもを産み育てやすい社会環境の実現を目指して、 調査事業、 啓発活動、 シンポジウム 、セミナー等の交流イベントの開催、助成事業などに取り組まれており、 『 18時に帰る―「世界一子どもが幸せな国」オランダの家族から学ぶ幸せになる働き方 』 という書籍の出版もされています。
こちらの書籍でも紹介されているオランダでの調査結果を元に、 かつて日本と同じような状況だったオランダが、 どうやって働き方改革を実現させたのか、 そのヒントやナレッジを、 実際に調査研究に携わられた秋山さまに、 生の声としてリアルに語っていただきました。
1.講義テーマの背景
働き方改革が日本で叫ばれて久しいですが、 現場で進める上で苦労されている方も多いのではないかと思います。 弊社も例外ではなく、 様々な取り組みを実施してはいるものの、 より推進するためのコツや、 メンバー間でのさらなる風土醸成を目指し、 今回講義をお願いしました。
(ここからは、秋山さまのご講義を要約した内容となります。)
2.講義内容
なぜオランダを選んだのか
ユニセフが実施した子どもの幸福度を計る調査ではオランダが総合順位1位。 かつて日本のように出生率が1.46まで減少していたオランダでは、30年かけて1.7にまで上昇しており、日本がオランダから学ぶ点が多々あるのではとの考えから、 2017年にオランダの子育て世代1,000人に対する定量調査と現地調査を実施した。
【出所】:unicef 2013『イノチェンティレポートカード11先進国における子どもの幸福度―日本との比較 特別編集版』
オランダモデル(ポルダーモデル)の成功
1982年のワッセナー合意以降の、労働者団体・企業・行政の掛け合いが、国民の働き方を変えた。
・労働時間差別禁止法 : パートタイムとフルタイム勤務の待遇格差を禁止
・労働時間調整法 : 最低1 年間同一勤務先で勤務した労働者が労働時間の増減を雇用主に要請できるよう保障
・就労と育児に関する法律 : 13 週間の育児休暇を取得することができるよう保障
・育児法 : 政府・雇用主・被雇用者(子の両親)の三者が、育児施設利用の費用を3 分の1 ずつ負担する
その他にも近年に整備された制度が多数存在する。
企業の取り組み(オランダの働き方の特徴)
① 働く時間や日数・場所を柔軟に変えることが可能
② 企業には法律以上の細かな就業規則が少ない
③ アウトプット重視の評価制度
④ テレワークは管理しない
⑤ チーム主義
( 講演資料から抜粋 )
現地インタビュー
Q : 子育てをきっかけにフルタイム勤務からパートタイム勤務になった社員が、子どもが大きくなってもフルタイムに戻らずキャリア志向が停滞している一面もあるとうかがったが、その点についてどう考えているか。
A : 課題とは思っていない。大事なのは女性の管理職比率ではなく、その選択肢と権利を持っていて、実際に使えること。
Q : 他の人の働き方をうらやましいと思わないか。
A : その人にとって都合の良い働き方というだけであって、それが自分にとって都合の良い働き方ではない。いつでも自分にとって都合の良い働き方をすることを権利として持てていることが大事。
⇒ 一律の規則をつくってそれを遵守するのは限界がある。 いつでも実施したい働き方ができることが大事であり、 その結果として生産性が向上するという考え方
※ 柔軟に対応するために就業規則は細かく設定されておらず、 個別ルールは上司と部下の間で話し合って決める。( 人事はあくまでアドバイザーとしての存在 )
( 講演資料から抜粋 )
3.メンバーとの質疑応答タイム
Q : ( 上記資料の ) 家族ファースト・フレキシビリティ・アウトプット重視の評価、チーム主義の4つだと、 アウトプット主義のところが課題。 それを見ることができる人と評価やジャッジのできる人が必要。オランダの企業の上司は、日本の企業の上司に比べて裁量を与えられているのか?
A : 上司の責務は目標達成。 各従業員はアウトプットができていれば、 どこで何時間働いていようが関係ないという扱い ( 上司もそうだから部下もそうできる )。 ゴール設定が肝。適切なゴールを設定してそれを部下と決めること。
Q : オランダと日本では教育も含めて前提が異なる点が多々あり、 こういったお話しを聞いたあとに、 どう着手すべきか悩んでしまいそう。 実践できている会社はどういうことが起点になっているのか知りたい。
A : 私も話しを聞いた当時は、ほど遠い社会だと感じていた。日本でも、成果主義や高プロ導入など取り組みを始めてきている。以前は、「 その会社のプロではあるが、 何が自身の売りになるのか…? 」 という社会だったと思うが、 今は変わってきている。 企業の考え方が変わって、 年齢などに関わらず、 アウトプットに応じて賃金を払う・役職を用意すると変わってくると思う。若者の考え方、先進的な企業の考え方に追随することによって、企業文化・学生の考えも変わってくるのではないか。
Q : 日本企業のジョブローテーションは、 自分のスキルを磨いていく側面もあると思う。 オランダでは成果重視の文脈だったが、 どんな風に会社としてとらえて、 従業員はどうスキルをのばしているのか?
A : 基本的に入口が日本と違う。日本は入社してから高める。オランダは入ってくる時点でプロフェッショナルという考えが強い。 人事が面接して… という形ではなく、 インターンのように実際に現場に入ってもらって、 双方ギャップがないかを確認するのが通常プロセス。 学生のときからある程度専門的なスキルを身に着けないと、 自分の目指す就職先に入れなかったりする。 とはいえ、 大学卒業のタイミングで入れなかったから厳しいという社会ではない。 学びなおしを目的とした半年休暇などのサポート体制が存在している。
Q : オランダではプライベートなことも共有するとあったが、 日本社会では容易にできる人もいれば、 躊躇をする人もいそう。 コミュニケーションスタイルの違いを比較するとどうか?
A : チーム主義におけるプライベートの共有は、 サポートを得る、 チームで行動するために必要なこともあるはず。 企業の不妊治療の支援も課題としてあがっている。 体外受精などは突然の通院を求められることがある治療。 こういうときに会社のサポートを得るためには、 伝えなければ対応できなかったりもする。 ある程度、話しをしていくべき内容ではと個人的には思っている。
Q : オランダの働き方のすばらしさはなるほどと思ったが、 調査・研究される中で、 ここは日本の強みやすばらしさであると見えてきたものがあれば知りたい。
A : 企業側がチームワークを社内でつくるために、 催し物をやったりするところ。 家族も参加して、 企業全体に対して愛着を感じるようになる。 オランダとは違ったチームビルディングが存在していると思う。
4.結び
「 いつでも働き方を選択できる権利があることが大事 」という一言が印象的だったのですが、 そういった体制を会社でつくることが、 チームワーク・モチベーションの向上や従業員満足度の向上、 生産性アップの好循環を生み出すことに繋がるのだろうと感じました。 もちろん日本とオランダでは前提が異なる部分もありますが、 できるところから会社として取り組むなど、 メンバー同士のチームワークやお互い様の助け合いの風土を醸成していきたいと思います。
メンバーからの多数の質問に対して、 現地での声を交えながら丁寧かつ詳細に答えていただいた秋山さまに、 心より感謝申し上げます。
今回、お話を伺った秋山さまが専務理事を務めている公益財団法人1 more baby 応援団の著書はこちらです。(amazonリンク)
18時に帰る ―「世界一子どもが幸せな国」オランダの家族から学ぶ幸せになる働き方
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