社員が主体的に考え、行動するカルチャーを形成するためには、従来の画一的な人材育成・組織開発だけでなく、その企業「らしさ」を活かした実践的なプログラムが必要不可欠である。これを受け、当社ではProFuture株式会社と共催して「経営戦略を実現させる人材育成の要諦とは」と題したセミナーを開催した。
セミナーの内容を前編・後編に分けてお伝えしており、後編となる今回は、弊社・野口と三坂によるパネルディスカッションの様子をお送りする。 ファシリテーターはProFuture 代表取締役社長の寺澤 康介氏が務めた。
■パネルセッション
「主体性の高い組織・人材を創るために経営、人事がなすべきことは何か」
野口 吉昭/創業者 HRIフェロー エグゼクティブコンサルタント
三坂 健/代表取締役社長 プリンシパルコンサルタント 寺澤 康介氏/ProFuture株式会社 代表取締役社長/HR総研所長
■変化のためのヒントは、現場にある
寺澤:野口さんは30年も前から、『ワークアウト』を通じて事業成長・組織成長・人材成長を結びつけて来られたわけですが、これはまさに今、人的資本経営において言われている「経営戦略と人事戦略を連動させなければいけない」ということ、そのものだと感じます。『ワークアウト』では当初からこれらの連動を意識されていたのでしょうか?
野口:もちろん重視はしていましたが、創業当時は人材育成と戦略構築を決して同じ比率では考えていませんでした。3対7くらいの割合で戦略構築に重きを置き、結果的に人材が育てばいいくらいの感覚だったんです。ただ『ワークアウト』を数多く行っていくうちに、参加者の多くが思っていた以上に本を読んでいなかったり、勉強していないことがわかり、まずは基本的なビジネススキルから教える必要性があると感じるようになりました。そこで5対5、6対4と、次第に人材育成に主眼を置くようになり、現在に至っています。
三坂:確かに昔は、事業戦略を立案するためのアプローチとして『ワークアウト』を導入いただくケースが多かったのですが、最近は人材育成の比重が上がってきているなと感じますね。その理由の1つに、やはりVUCAの時代であるがゆえに、さまざまな現場起点でのアイデアを活かしていくべきだという考え方が組織の中で広まってきているのでしょう。それに伴って人材育成を強化する企業が増えてきていると思います。
野口:30年前に比べると企業の問題意識も変わってきました。市場が大きく変化する中、「事業構造を変えなければいけないのは当たり前。これからはそれをいかに実現するか」というステージに移ってきている気がしますね。
寺澤:人の価値を高めることこそが企業価値を高める、そういう時代に変わってきたと。その中で御社は社員の主体性を重視するプログラムを作られてきたわけですが、そこにはどのような狙いや考えがあったのでしょうか?
野口:答えがなかなか出ない時代における新しい輝きや、変化のためのヒントは、やはり現場にあるだろうと。それを引っ張り出して、自分なりに「こういう風に変えたいんだ」と経営トップを口説けるような人材がいないと、事業成長は実現できないと思うんです。色々な切り口で新しい輝きを見つけ出すためには、現場の主体性が必要不可欠だと考えています。
寺澤:続いて三坂さんのご講演内容に関してですが、自社の「らしさ」が重要だというお話は、昨今注目されているパーパスの議論にも近いように感じました。ただ会社によっては、この「らしさ」がイメージしにくいケースもあるかと思います。一体どのようなところに着目したら、自社の「らしさ」を見つけることができるのでしょうか?
三坂:一番わかりやすいのは、創業時の理念。そこにこそ「らしさ」の原点はあると思うので、まずはそこを紐解くことが大事です。ただしM&Aなどを繰り返していると、そこの部分がぼやけてしまうケースもあるので、そういう会社の場合は、エポックメイキングな事象に着目し、そこから「らしさ」を抽出するというやり方もあります。さらにもう一つ加えると、誰でも最初はその会社の何かしらの個性に惹かれて入社していると思うんです。つまり自分がその会社を選んだ理由、そこから「らしさ」を見出して、言語化していくというのも手だと思います。
寺澤:組織のミッションやビジョンを作っても、それがなかなか浸透しない企業もあるかと思います。浸透・定着させるために何かアイデアはございますか?
三坂:例えば弊社の場合、ベトナム、カンボジア、ラオスに学校を作っており、それが我々にとっての理念の一つなのですが、それに絡めて、今度ビジョンツアーという社員旅行を実施するんですよ。言葉だけでは「らしさ」はなかなか体得できないので、何かしらイベントや制度という形で具現化させることもお勧めします。
■社員が主体的に学べる環境と、人間的成長の機会を提供する
寺澤:かつての企業と社員の関係性は、終身雇用の中で会社の命令に社員が従うというものでしたが、近年は選び・選ばれる対等な関係へと変わりつつあります。そうした中で、企業は人材育成や人材マネジメントにどのように取り組むべきだと思われますか?
三坂:スキルとスキル以外で分けて話をさせていただきますと、まずスキルに関しては、成長意欲の高い社員のために、主体的に学べる環境を提供することが大事だと思います。今って知識などをインプットする方法はたくさんあるので、そのためのインフラを整えてあげることが重要でしょう。一方、スキル以外に関しては、やはり人柄や人間力の部分が鍵になります。特に将来リーダーになっていかれる方は、多様な人たちを束ねてチームを作っていかなければなりません。そのため、単に仕事で成果をあげさせるだけの教育ではなく、人として成長を促すような機会を提供し、人間力を高めてもらう必要があります。
寺澤:『ワークアウト』にも人間力を高めるようなテーマ設定はあるのでしょうか?
三坂:そうですね。人間は、いろいろな人との接点の中で自分を認知したり、ギャップを埋めようとしたりすると思うんです。逆に、硬直化した人間関係の中では人格はなかなか育ちません。そういう意味でいうと、『ワークアウト』はさまざま部署から人を集めて行いますし、外部の人間も参加しますし、場合によっては他の会社との他流試合も行います。そうして外気に触れることで、いろいろな気づきにつなげていただき、人間的な面を鍛えていきます。
野口:現在行っているプログラムの中で言うと、例えばAからJまで10個の事業があって、自分はその中のBの事業部長を務めているとします。この先、役員に昇進するためには、さらに全社的な視点が必要不可欠です。そこでまったく異なるH事業部に行って、社員にヒアリングをしながら、H事業を改変させるために自分なりに答えを出して、H事業部の事業部長に提案する、といったプログラムも行っています。このように社内の中でも外気に触れる機会はあるんですね。