■主催者講演
演題/「社員・組織の自律性を高めるポイントと実践手法」三坂 健 代表取締役社長 プリンシパルコンサルタント
■社員が自らマネジメントできるようになるには

どんな会社にも「らしさ」、つまり人間に例えるなら人格や個性があって、そこに惹きつけられた社員が集まり、その人格や個性をより良くするために日々働いていらっしゃるのではないかと思います。本日ご参加いただいた皆さんは、自分の会社の「らしさ」を、自信を持って語れるでしょうか? ここからはその点をテーマにお話しさせていただきます。
まずはマクロの視点で人材マネジメントを取り巻く環境について少しだけお話をしたいと思います。近年、AI、自動化、テレワーク、副業などによって、現場でやらなくてもいい仕事の領域幅が広がってきました。一方で人手不足が深刻化し、さらにダイバーシティや働き方改革なども進み、人材マネジメントの重要性が日々高まっています。
そうした中、組織のあり方にも大きな変化が求められています。これまでの組織は、上司からの指示命令系統が重視されてきました。しかしそうした従来のヒエラルキー型の組織では時代の変化に追いつけないため、現在では社員同士の主体的な行動や関わり、リレーションが重視されるスキルベース組織へと変革が進みつつあります。このリレーション型のスキルベース組織とは、主体性を発揮する社員によって形成される組織です。
しかし現実的には、形式と実態にギャップが生じている企業も少なくありません。本当はスキルベースで組織を動かしていかなければ成果に繋がらないことはわかっているのに、これまでの常識に縛られ、「俺は課長だから指示や評価をしなければいけない」という言い知れぬギャップのようなものを感じている方もいらっしゃるでしょう。ですので、少しずつ従来のヒエラルキー型組織からスキルベース組織へと変革させていき、ぜひモヤモヤしたギャップを解消していただきたいと考えています。
つまり人材マネジメントとは、会社・上司からマネジメントされる状態ではなく、社員が自らマネジメントできる状態のことを指します。では、社員が自らマネジメントができるようになるにはどうしたらいいのかというと、会社が大切にする価値観、目指す方向性、つまりは「らしさ」を言語化する、それに尽きるでしょう。ミッション、ビジョン、バリューなどを言語化して、浸透させることで、社員には「他社との違いへのこだわり」「心理的安全性」「挑戦マインド」が芽生えます。これは言い換えるなら、思い切り挑戦・行動できる環境が整うということ。そしてその結果、自律的な行動へと繋がり、競争優位性のあるアウトプットが実現するというわけです。
また人材マネジメントの目的を揃えることも重要になります。社員が自分でマネジメントできるようになるためには、「どんな会社でありたいか?」「どんなチームでありたいか?」「そのためにどんな人材であってほしいか?」をきちんとすり合わせし、イメージできるようにしておくことが欠かせません。特にスキルベースの組織になればなるほど、スキルを持った人たちに自律的に仕事をしてもらうためには、イメージの共有やそのための環境づくりを上司や経営層が率先して行う必要があると思います。
■社員に会社の「らしさ」を語らせる
そこでポイントになるのが、「EVP(エンプロイ―・バリュー・プロポジション)」です。これは自社が提供できる価値であり、他社は提供できない価値、つまり「うちにしかないもの、うちでしか得られないもの」=「うち、らしさ」を指します。そうしたものが明確に示されれば、社員は会社や仕事に対して誇りを持てるし、こだわりも持てるでしょう。それは会社が社員に期待している働き方でもあると思います。よって、いかに「うち、らしさ」というものをイメージしながら仕事に向き合ってもらえるか。ここが社員の自立性を高める鍵になると思います。
では、社員にイメージさせるためにはどうしたらいいのでしょうか。最も効果的なのは、社員同士が「採用」と「育成」に積極的に関わり合うことです。リクルートやサントリーなど社員の自律性が高い会社は共通してこれを行っています。例えば、面接などで求職者から会社について質問されますよね。きちんと答えるためには自分の言葉で語れるようにならなければなりません。そのように採用や育成に関わることで、次第に自分自身も会社のことをより強くイメージできるようになるのです。
最後に『ワークアウト』についてご説明いたします。『ワークアウト』は、いわゆる研修やコンサルティングとは異なり、参加メンバーの主体性を育成する場です。実践的なテーマのもと、メンバー自身が課題解決ワークをすることで実践力を鍛えます。テーマは、「新規事業」「営業戦略立案」「新ビジネスプロセス構築」「業務改善」など、組織の課題と対象とする人材によって決定。またセッションごとに、質のよい経験学習サイクルを回すことで、アウトプットの質的向上と人材育成を同時に実現していきます。 ご静聴いただきありがとうございました。