「理解してもらえない」と思ったとき、実践したい思考法とは?/ポータブルスキル大全(3)
より豊かな人生のために、キャリアを選択できる時代。誰もが転職しうる「全員転職時代」を生き抜くためのスキルを、『人材育成コンサルタントが本気で考えた 全員転職時代のポータブルスキル大全』(HRインスティテュート著)よりご紹介します(第3回)。
凝り固まった考えに縛られないゼロベース思考
自分では論理的に考えているつもりだし、伝えている。しかし、相手に理解してもらえない。そんな経験は必ずある。また反対に、相手の言っていることにどうしても同意できない、共感できない……というケースもある。
こうしたときに思い出したいキーワードが「ゼロベース思考」だ。ゼロベース思考とは文字通り「一旦、前提をゼロに戻して考え直すこと」を意味する。
人にはそれぞれ独自の「経験」やそこから導かれる独自の「解釈」が備わっている。この経験や解釈を共有している人に対しては考えが伝わりやすく、共有できていない人には伝わりにくくなるものだ。
たとえば、経営者が「うちの社員にはなかなか伝わらない」と考えたり、反対に社員が「うちの社長は社員の声を受けとめない」と解釈したりする背景には、それぞれが異なった経験を有し、それぞれの立場に沿った解釈をしているから、ということが多い。
こんなときは、自分自身をゼロベースな状態に戻してみて、もしかすると凝り固まった考えに縛られているのでは……と向き合ってみることが大切だ。具体的な方法はシンプルだ。まずは次の3つを実践してみよう。
①相手の立場で考え直す(思考の枠組みを外す)
自分という枠を離れ、相手の立場、目線から物事を捉えなおしてみる。もしかすると自分が認識できていない事実や感情が存在するかもしれない。
例:ある社員が会議で発言しないことに対して「自分の考えがないのだろう」と思っているが、もしかしたらその社員は「会議では黙っているほうが得だ」と考えているのかもしれない。
②目的を再確認してみる
そもそも何を目的に考えているのかを確認する。自分と相手の間で、目的の認識が異なれば当然、導かれる結論や解釈も変わってくるからだ。
例:あなたが理想とする働き方とは全く異なる働き方を、相手は望んでいるかもしれない。
③短絡的に答えを出していないか疑ってみる
人、モノ、カネ、情報、時間、空間……など、人は思考に際し一定の制約を設けがちだ。制約の置き方の違いによって答えの出し方も異なってくる。自分がどういった制約にこだわっているのかを確認すると、別の道筋を見つけられるかもしれない。
例:あなたは「早くやらなければ」とか「人は増やせない」と考えているが、実際は、時間をかけて取り組んだり、人を増やすことも選択肢の1つになり得るかもしれない。
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あらゆる経験を持つ人と、あらゆる環境で仕事をするためには、思考の柔軟性を高めることが不可欠だ。長く1社に勤めている人もゼロベース思考を訓練してみよう。
HRインスティテュート